- ニューアプローチ指令では、製品が要求事項を満たしていることを示す情報が含まれた 技術文書(Technical Documentation)の作成を製造者に義務付けています。
- 技術文書は製品の適合性を立証するためのもので、必須要求事項をどのように適合させ、対策を実施したのかを記述し、製品がわかるような仕様書・配線図などの技術資料で構成されています。
- 製品の製造終了日から約10年間保管する必要があり、当局からの要請があれば、いつでも開示しなければなりません。
- EU域内に委任代理人がいる場合は、この代理人が文書を管理します。技術文書の内容は、各ニューアプローチ指令に定められていますが、以下のような内容が含まれます。
- 仕様書などの製品の一般的説明
- システムブロック図、配線図、回路図など
- 機器の動きを理解するのに必要な説明・記述
- 規格リスト及び指令の必須要求事項を満たすため実施した安全対策の内容説明
- 試験報告書
- 取扱説明書 等
(1)㈱フジセーフティ・サポートの作成の技術文書(TD)作成例
(2)㈱フジセーフティ・サポートの技術文書の特徴
- 約30頁の分量
- 直感的に理解できる図と絵が豊富
- 必須要求事項を簡潔に表現
- シンプルな文書構成
①一般 ②技術 ③EMC ④安全 ⑤RoHS ⑥自己宣言 ⑦添付書類
(3)技術文書作成の手順(例)
1.製品企画、開発の源流段階における規格・技術の考察
製品企画、開発の段階からCEマーキングの要求事項を考慮することにより、後戻りのないスムーズな開発が可能となります。
2.リスクアセスメントとリスク対策の妥当性の検証
試作機の構造評価を行います。その場でリスクアセスメントを行い、リスク対応策を練ります。
3.製品安全・EMC規格適合のための業務・テストプランの作成
CEマーキングの実務における業務プランとテストプランを作成し、ムリ・ムダ・ムラのない業務計画を立てます。
4.安全・EMC試験の実施と評価
テストプランに基づいて試験を行い、製品を評価します。
5.取扱説明書、技術文書(Technical Documentation)の作成
技術文書は自己宣言書(DoC)に続き、EU地域の通関で審査対象となる重要文書です。
※最近の新指令では特に、EC指令に適合した根拠を記述した書類としてその要求度が高まっています。
(4)技術文書を社内の安全技術の伝承に活用
技術文書を作成した後、ファイルの保存をして、そのまま放置していませんか。
技術文書を「CEマーキング適合への必要書類」としてだけではなく、「社内の安全技術を蓄積させる文書」として位置づけることによって、社内の安全設計技術を継続的に積み上げることができます。
(5)技術文書の本質的機能
- CEマーキングに適合するための必要書類
- 社内外に対して、CEマーキング適合の根拠を分かりやすく簡潔に伝えることができる
- 社内で人の異動、退職、採用、休職などがあっても、安全技術を確実に伝承・蓄積させていくことができる。
(6)トータル・コスト(費用)とリード・タイム(時間)を低減させる方法
「CEマーキングの実務は、費用も時間もかかるもの」と考える方が多いと思います。
確かに、CEマーキングの実務を行う上では、安全技術、法規制・規格の知識、英語の読解、文書作成などの総合力が必要となってくるため、決して簡単ではありません。
それでも、毎回の業務を確実に積み重ねることによって、徐々にできるようになってくるものです。
社内外の様々なサポートを活用しながらも
- 自社製品の安全を他人まかせにしない
- メーカーとしての安全の考え方を構築し、ノウハウを蓄積させる
- それらの情報を共有し、次の世代に伝承する
ということの積み重ねが結果的に、CEマーキングの実務に要するトータル・コスト(費用)とリード・タイム(時間)を低減させていくのです。