業務案内

「安全なものづくり」と「法規制・規格への適合」

現在、日本の機械メーカーが自社製品を海外に輸出する際に、CEマーキングなどの法規制・規格が大きな障壁となっています。私たちの主な仕事は、この法規制・規格を満たすだけでなく、本質的に安全な製品をつくるために、安全規格・技術の側面からメーカーの開発設計者をサポートすることです。

私たちは、輸出製品の国際安全規格・技術、及びそれらに関連する業務サポートを通して、メーカー様の製品の「安全なものづくり」と「法規制・規格への適合」を実現して、社会に貢献することを目指しています。

安全・健康・ウェルビーイング

向殿政男先生の記事で興味深いものがありました(下記)。
今まで安全と健康について、考えてきましたが、これからは身体的、精神的、社会的なウェルビーイング(Well-being)が必要な時代であること、働く人の幸せ、生きがいを企業の経営トップを巻き込んで対応することの重要性を述べています。
すなわち、怪我をしない、病気をしないなどのネガテイブ(マイナス)の旧概念からやりがい、生きがい、幸福を得ることで安心するポジティブ(プラス)の新概念をウェルビーイングとしています。
最初に従業員の幸せの実現を目指すウェルビーイングがあって、その結果として、企業の利益が上がるのであって、その逆ではないと言うこと、これまでの安全、健康までは目標に入れていたが、今後は、人間の心の在り方が重要であること、非常に共感できるものがあります。

実は、この考え方は、今に始まったことではなく、日本的な経営の中で展開されてきているものであると思います。
私は長野県の伊那に住んでいますが、この地に”かんてんパパ(伊那食品工業)”がありますが、従業員の幸せ、生きがいを経営の最重要課題としている企業です。
いくつかの工場の他にレストランがあって、地元の人たちの憩いの場ともなっていて、働く人たちと訪れる人たちが、一緒になれるコミニティであって、私自身、よく訪れる好きな場所です。

伊那食品工業株式会社 https://www.kantenpp.co.jp/corpinfo/
かんてんぱぱガーデン https://www.kantenpp.co.jp/garden/

安全、健康、ウェルビーイングの旧概念と新概念
安全、健康、ウェルビーイングの旧概念と新概念
出典: 向殿 政男 (明治大学名誉教授) セーフティダイジェスト、Vol.68, No.11, pp.2~8、(公社)日本保安用品協会、2022-11

※ウェルビーイング(Well-being)
個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味する概念
(厚生労働省:雇用政策研究会報告書より)

セーフティ (安全) とコンプライアンス (法令遵守)

法規制・規格は、以前に増して目まぐるしく変化しています。海外に製品を輸出する場合には、この変化を事前に キャッチして製品に反映することが必要となります。これらの変化に対応出来ない場合には、その市場から脱落せざるを得ない状況となることは、昨今の事例から明らかとなっています。

限りある経営資源の中で的確な対応することは、困難なことが多くありますが、日々の物づくりの活動の中でこれらを一つ一つ対応して行くことが解決策となります。

また、安全な製品づくりを目標として、国際規格・海外規格に適合した個社に適した物づくりの体制を構築、各部門の役割を明確にして実践すること、及びこれらの情報収集も必要となります。

3つの重要なポイント

1.安全な製品はユーザー要求、各国の規制はユーザー要求として捉えること。

2.経営トップの意識を変えること。

  • だれが、どこで、どのようにして、…(個社自身の問題)
  • 問題点を共有して社内組織の管理システム(製品安全、品質システム)を構築すること。
  • 経営トップと部門リーダーの積極的な判断の下に社内各部門で実践すること。

3.思考技術の強化と企業のリスク管理を実践すること。

思考技術は、問題解決と意思決定のコストを下げる。

※思考技術とは?

  • 知識ではなく、知恵をしぼって考える技術。
  • これは十分な知識がなくとも問題を解決できる能力で、考えることも技術。
  • インターネットやその他の情報機関から多くの知識を得られる時代であるが、この思考技術を向上させて実践することが、今後の海外規格適合・取得をはじめ社内体制づくりに必要不可欠。

取扱説明書の要求 (EU機械指令(Machinery Directive)から機械規則(Regulation)へ)

2021年4月21日に現行の機械指令 (2006/42/EC) に置き換わるものとして機械規則 (Machinery Regulation) が欧州議会、欧州理事会へ提案(下記)されています。

「機械製品に関する規制の提案 欧州委員会COM (2021) 202 2021/4/21」
(Proposal for a Regulation of the European Parliament and of the Council on machinery products)
※URL: EUROPEAN COMMISSON

現行の機械指令 (MD) の問題点として、紙ベースの膨大な書類による金銭的・環境的コスト負荷が大きいことが指摘されていて、今後、特にメーカーの取扱説明書(Instruction/User Manual)の対応がより重要となって来ています。 (詳細は、URL原文参照)

1.7.4項:機械装置に添付する取扱説明書のデジタル形式に関する記載

1.7.4. Instructions

The instructions accompanying the machinery product shall be either ‘Original instructions’ or a ‘Translation of the original instructions’, in which case the translation shall be accompanied by the original instructions. …

1.7.4.2 (c)項:インターネットアドレスでEU適合宣言書へのアクセスを許容

1.7.4.2. Contents of the instructions

(c) the EU declaration of conformity, or a document setting out the contents of the EU declaration of conformity, showing the particulars of the machinery product, not necessarily including the serial number and the signature, or the internet address where the EU declaration of conformity can be accessed.

今後、正式に機械規則(Regulation)が発行・制定された内容を確認することが必要ですが、特に重要な安全に関するユーザーへの提供情報をどのようにするかの問題がありますが、基本的に取扱説明書がデジタル形式で提供する時代で規格IEC 82079-1の適合と共にその対応が必要となっています。
※URL: IEC 82079-1による使用説明書作成

制御システムの安全関連部の妥当性確認 (ISO 13849-2)とは?

対象システムの安全関連部 (ISO 13849-1) に求められる安全機能、カテゴリ、及びパフォーマンスレベルについて、妥当性確認を基本安全原則、及び十分吟味された安全原則に基づいた規格で設計のための一般原則を規定、規格名は「妥当性確認」ですが、設計の考え方、方法を述べている観点からで必読すべき規格です。

(1) 基本安全原則、及び十分吟味された安全原則の用語定義

ISO 13849-1, ISO 13849-2、及びISO 12100の用語定義にはその具体的定義は示されていない。
その定義を解釈するために参考となる記述は、ISO 13849-2 の附属書A~Eに妥当性確認ツールがあるのでこれらを理解して、それらを具体的に解釈して対応することが重要となる。

  • 附属書A (参考) 機械システムに対する妥当性確認ツール
  • 附属書B (参考) 空圧システムに対する妥当性確認ツール
  • 附属書C (参考) 液圧システムの妥当性確認ツール
  • 附属書D (参考) 電気システムの妥当性確認ツール
  • 附属書E (参考) 障害の挙動及び診断手段の妥当性確認の例

(2) 安全原則は、機械システム、空圧システム、液圧システム、電気システムについて記載されている。

※ここでは、機械・電気システムのみ記載 (解釈 ★特に重要)

1) 機械システム

1. 基本安全原則 (表A.1)
  • 適した材料、及び適切な製造方法の採用 (例:応力・耐性・弾性・摩擦・摩耗・腐食・温度)
  • 正しい数値設計、及び形状 (例:応力・ひずみ・疲労・表面粗さ・公差・固着・製造方法)
  • コンポーネント、及びシステムの適切な選択、組合せ、配置、組立、及び据付 (最適化設計)
  • エネルギー解放の原則の使用 (例:,運転モード・保全モード)
  • 適切な留め具 (トルク管理技術)
  • 力の発生、及び、又は伝達の制限、並びに類似パラメータの制限 (例:トルクリミッター)
  • 環境パラメータの範囲制限 (例:据付場所での温度・湿度、及び汚染)
  • 速度、及び類似のパラメータの制限 (例:速度・加速度・減速度)
  • 適切な応答時間 (例:ばねの疲労・摩擦・潤滑・温度・加減速時の慣性・公差の累積)
  • 予期しない起動に対する保護 (蓄積エネルギーにおける起動・モードの動力源復帰後の起動)
  • 簡素化 (安全関連システムの不要なコンポーネントの回避)
  • 分離化 (安全関連機能を他の機能と分離)
  • 適切な潤滑 (潤滑装置・潤滑に関する情報、及び潤滑間隔)
  • 液体、及びほこりの侵入の適切な防止 (IP 保護等級)
2. 十分吟味された安全原則 (表A.2)
  • 慎重に選定した材料及び製造方法の使用 (用途に適切な材料、製造方法、及び処理方法)
  • 非対称故障モードのコンポーネントの使用 (明確な故障モード、確実な再現性)
  • 余裕をもった数値設計、安全係数 (安全の冗長設計、経験則に基づく実績設計)
  • 安全な位置 (可動部分の機械的な安全位置への移動と保持)
  • オフ状態を保持する力の増加 (安全位位置と状態:オンとの力関係でオフの力を増加)
  • 用途に関連したコンポーネント、及びシステムの慎重な選択、組合せ、配置、組立及び据付
  • 用途に関連した締め付け方法の慎重な選択 (摩擦だけに依存しない)
  • ポジティブな機械的動作  (例:”ばね”によってではなく、カムが電気スイッチ接点を直接開く)
  • 複数の部品 (障害の影響の低減 例:複数”ばね”の使用)

2) 電気システム

1. 基本安全原則 (表D.1)
  • 適した材料及び適切な製造方法の採用
  • (例:応力・耐性・弾性・摩擦・摩耗・腐食・温度・導電性・絶縁耐性)
  • 正しい数値設計、及び形状 (例:応力・ひずみ・疲労・表面の粗さ・公差・製造方法)
  • コンポーネント、及びシステムの適切な選択、組合せ、配置、組立及び据付 (最適化設計)
  • 正しい保護ボンディング  (保護接地 PE:保護ボンディング回路)
  • 絶縁状態の監視 (絶縁監視装置:地絡発生時の自動的遮断 *監視が必要機器に適用)
  • 非通電の使用 (関連装置の通電解除 *Normal close(Input) / Normal open(Relay)
  • 過渡電流の抑制 (抑制素子 (RC・ダイオード・バリスタ) 負荷に対して並列使用)
  • 応答時間の減少  (非通電遅延時間の最小化)
  • 適合性 (使用電圧、及び電流に適合するコンポーネント *認定部品の使用)
  • 耐環境条件  (想定される環境条件、予見可能な条件 例:温度・湿度・振動・電磁障害 (EMI/EMS)
  • 入力装置の固定 (想定条件下での入力装置の取付位置の範囲を維持)
  • 予期しない起動に対する保護 (例:電源復帰後の起動)
  • 制御回路の保護 (IEC 60204-1の7.2項(過電流保護)、及び9.1.1項(制御回路電源)の要求に従う)
  • 冗長回路における直列に接続された接点の順次動作 (接点溶着による共通モード故障の回避)
2. 十分吟味された安全原則 (表D.2)
  • ポジティブな機械的結合接点 (ポジテ ィブな機械的作用 例:ドアスイッチ (強制開離) )
  • ケーブルの障害回避 (二つの隣接する導体の短絡回避)
  • 分離距離  (意図しない接続を回避 *端子間、コンポーネント、及び配線間は十分な距離をとる)
  • エネルギー制限 (危険源の顕在化と保護方策 *危険エネルギーの回避)
  • 電気パラメータの制限 (電圧・電流・エネルギー・周波数の制限 例:トルク制限・ホールディング・減速)
  • 不確定な状態がない (不確定状態の発生回避、及び出力が予見可能なように設計・構築)
  • ポジティブモード作動 (弾性要素なし直接動作伝達 例:アクチュエータとコンタクタ間のばね)
  • 故障 (障害) モードの非対称 (装置・回路は、安全側故障、又は安全側状態に遷移)
  • 非対称故障モード (非対称故障モードコンポーネント、又はシステムの使用)
  • 余裕をもった数値設計 (マージンを持った安全回路のコンポーネントの使用)
  • 障害の可能性を最小化する (安全関連機能は他の機能から分離 *特に機能安全が必要な機器)
  • 複雑性と簡素性のバランス  (安全性を確保するための複雑性と簡素性を考慮)
3. 十分吟味されたコンポーネント一覧 (表D.3)  *規格書参照