一般向けコラム

これからの社会に必要な安全規格

今日、製品を海外に輸出する際に、海外安全規格に適合した製品開発設計、製造することは、多くの製造メーカーにとって必須、不可欠なものとして認識されています。私自身、昨年より公的機関で中小企業を中心としたメーカー様の海外、及び国際安全規格の専門相談の仕事をさせていただいていますが、その中で海外展開のための「ものづくり」の現状の課題、そして今後、どのように対応したら良いか、安全規格コンサルタントとしての意見を述べたいと思います。

(1) 現状の課題

約50社以上のメーカー様の相談で共通していることは、大きくわけて次の3点あります。

  1. 海外・国際安全規格について、実務的な情報源がない。
  2. 法規制・規格の内容が難解で具体的な技術的要求が理解出来ず、
    社内に専門のスタッフがいない。
  3. 規格適合確認試験、テストレポート、文書作成に時間と費用がかる。

上記の1.について、身近な情報源としてインターネットが有りますが、対象分野の専門的な知識・理解力がなければ困難で、また海外規格は英文を読解することが必要となります。多くの場合、対象の製品は、その分野が限定されていて、適用する規格の範囲も絞ることが出来ますが、相互に関連する規格・技術を総合的な視点で眺めて、適切に対応ことはかなり大変な仕事となります。

あるメーカーさんから「どこに行ったら海外規格の総合的な情報が得られるのか?」と言うご相談を受けたことがあります。この質問に対する回答は、「そのようなところは、どこにも無いので自身で見つけることが必要」と言う結果になりましたが、「ものづくり」の現場では、ワンストップで対応、問題を解決出来るところを必要としていて、これは切実な現場的な問題であると痛感しました。


2.については、開発設計者が海外法規制・規格の知識が無く、その対応方法が分からないことが最大の問題かと思います。未経験の技術者にとっては、元々このような教育を受けていないこともあり、多くの開発業務と平行して対応することは大変な負荷となります。また、社内に専門スタッフを置くことも難しく、いわば袋小路的な状況にあります。このような状況の中で現在、メーカーの輸出製品に対して公的な機関が、これを支援することが進められていることは、メーカーにとって朗報で積極的な活用が期待されています。特に開発現場では、規格要求に基づく製品設計を具体的な技術(*法規制・規格的安全技術)でスピーディに実践することが求められています。

[備考] 法規制・規格的安全技術
対象の法規制・安全規格の要求に沿って忠実に設計する技術で
これらを確認するための試験・レポート作成を含む。


3.については、時間と費用に関わることでメーカーにとってかなり切実な問題です。適合確認試験は社内に試験設備がある場合は、良いのですが外部試験機関を活用するとなると日程、費用の面でその対応が必要となります。いずれにしても社内的、社外的にも作業工数が発生して製品開発としての必須対応業務となっています。

(2) この課題にどのように対応したら良いか?

これらの課題に対して各メーカーは、それぞれの方法で対応していますが、専門的分野でその対策に苦慮しているのが現状かと思います。特に輸出製品が多くあるメーカーの場合は、その現状を知って問題点を検討、社全体として具体的な方針の下に進めることが重要です。

1. 海外・国際安全規格について、実務的な情報源がない。

実務的な情報源となるとこれらが、その分野のノウハウになっていたりするため簡単に入手することは困難です。現場においては、マニュアル的な実務情報を必要としていますが、これらの実務も基本的な情報に基づいて対応しています。過去、現在、将来への繋げていくためにも基本的なことを知って、それを自らの製品の実務情報とすることが望ましいことは言うまでもありません。従って、まずは下記の3点について対応、自ら理解することをお勧めします。

  1. 法規制・海外安全規格とは何か?
  2. 自社製品に関連する法規制・規格分野とは何か?
  3. 具体的に何をやることが必要なのか?

2. 法規制・規格の内容が難解で具体的な技術的要求が理解出来ず、社内に専門のスタッフがいない。

この問題は、開発現場の設計担当者の切なる思いと推察されます。規格書を読んでもその内容が理解出来ない、技術対応方法が分からないなど、直面する課題が多く発生します。身近に相談する専門家がいる場合は、問題ないのですが、対応のために関連資料、インターネットなどを利用するのですが、問題解決の核心にまで到達するには時間と労力を必要とします。

それでは、どうしたら良いのでしょうか?

結果的にこの問題に対する解決策の王道はありません。

メーカーが製品を世の中に出すためには、対象となる製品技術開発を行い、人、物、金の面での投資をすることと同じように法規制・規格についても先行投資の考え方で対応する必要があります。特に人の面で規格・技術のスキルは、基本的な知識と実務経験を必要とします。費用と時間をかけてもすぐに効果が出てくるものでは無く、将来的役に立つと言う教育的な側面もあります。

具体的な対応として重要な点は、下記です。

  1. 法規制・規格を対応出来る社内体制を整備する。
    ※規格書、関連資料を準備して、担当者を決める。
  2. 規格対応は開発業務の一部でその対応工数を考慮する。
  3. 外部コンサルタントを有効活用する。

3. 規格適合確認試験、テストレポート、文書作成に時間と費用がかる。

これは、製品開発に必要な業務となります。これらを開発計画に盛り込んでその業務計画書を作成して対応することが重要です。
具体的には、下記となりますが、社内で対応出来ない場合は、外部の専門業者を活用することをお薦めします。

  1. 製品仕様書に法規制・規格、及びその適用規格を記載する。
  2. 業務計画書を作成する。 ※弊社のホームページを参照
  3. 開発業務にその対応日程を反映して、実施する。